科研費による共同研究では、3年間にわたるプロジェクトの終了時に、研究期間中の活動を振り返り成果を報告する必要がある。しかし、長期間の記録を遡ることは容易ではない。
どのタイミングで何を議論し、何を決定し、実行した結果がどうであったかを時系列で整理し直す作業が求められる。多くの場合、過去のメールを探し出し、転送し合いながら記憶と記録を突き合わせるという非効率な作業に頼らざるを得ない。
異なる大学に所属する研究者がチームを組む場合、Microsoft TeamsやSlackなどの共同利用は難しい。各大学のITポリシーやレギュレーションが異なるため、特定のツールを全員が利用できる保証がない。
各研究者が自分のメールボックスを検索し、断片的な記録を持ち寄るという作業が発生する。記憶に依存するため正確性に欠け、重要なやりとりが見落とされるリスクもある。
メールは組織の違いに関係なく、どの大学においても利用が認められている。異なる組織間で確実にやりとりできる、事実上唯一の共通基盤である。この事実がシステム構想の出発点となる。
背景・課題から着眼点・コンセプト、そして期待される効果までの流れを一枚にまとめたインフォグラフィック。
図:メール集約システム構想の全体像 — 背景・課題 → 着眼点・コンセプト → 期待される効果
ツール利用の制約を逆手に取り、メールそのものを研究プロジェクトの記録手段として積極的に活用する。
チーム共有のメールアドレスを一つ用意し、日常のやりとりでCCに加えるだけで、プロジェクトに関するコミュニケーションが自動的に一箇所に蓄積されていく。特別な操作やツールの導入は不要であり、普段のメールのやりとりをそのまま続けるだけでよい。
プロジェクト専用のメールアドレスを一つ作成する。これがデータの集約先となる。
日常のメールのCCに共有アドレスを加える。それだけでやりとりが自動的に蓄積される。
蓄積されたメールは時系列で閲覧可能に。必要時に構造化データとして取り出せる。
プロジェクト期間中にメールをデータレイクとして蓄積し、必要なときに構造化されたデータとして取り出せる状態にしておく。
受信したメールは時系列で閲覧できるようにし、プロジェクト期間中の任意の時点での議論内容を振り返れるようにする。そしてプロジェクト終了時には、蓄積された全データを機械可読な形式で一括エクスポートできるようにする。
これにより、いつ何が議論され、どこにターニングポイントがあったのかを、手作業ではなくデータに基づいて整理し直すことが可能になる。
どのような手段で整理・要約を行うかは、その時点で利用可能な技術やツールに委ねる。重要なのは、後から活用できるデータが確実に残っている状態を作ることである。
自動蓄積 — 特別な操作不要。日常のやりとりがそのまま記録になる。
時系列閲覧 — 任意の時点での議論内容をいつでも振り返り可能。
一括エクスポート — 全データを機械可読な形式で出力。後続の分析・要約に活用。
ツール非依存 — メールのみで完結。大学のITポリシーに左右されない。
将来技術への開放性 — データさえ残っていれば、整理・要約手段はその時点の最良の技術を選択可能。
プロジェクト終了時のラップアップ作業において、記録の散逸や記憶への依存を減らし、データに基づいた振り返りを可能にする。
記憶ではなくデータに基づいて、いつ何が議論され、どこにターニングポイントがあったのかを正確に把握できる。
時系列で整理された記録により、研究成果報告書の精度と網羅性が向上する。
メールの検索・転送・突き合わせといった非効率な手作業を大幅に削減し、本来の研究活動に時間を充てられる。